建築基準法とは?
建築基準法とは、使用する人や地域に暮らす人々の生命、健康、財産を守り、安全に暮らせるように建物や土地に対して建築物の用途、面積、高さ、構造、設備など最低限守るべきルールを明確に定めた法律です。
建築基準法は、大きく以下の4つに分類されており、制限を調べる場合は、「建築基準法→建築基準法施行令→告示」の順に調べるとわかりやすいです。
法律 | 国会 | 建築基準法 | 基本的な建築物の制限 |
政令 | 内閣 | 建築基準法施行令 | 建築基準法で定めた制限の技術的基準 |
省令 | 大臣 | 建築基準法施行規則 | 建築確認申請や審査手続きについての内容 |
告示 | 大臣 | 国土交通省告示 | 施行令で定めた技術的基準の詳細内容 |
以下の解説に使用する建築用語の略語
法第〇〇条 → 建築基準法第〇〇条
令第〇〇条 → 建築基準法施行令第○○条
建築基準関係規定
消防法や都市計画法などは「建築基準関係規定」といいます。
建てる地域や建物の用途・規模に応じて建築基準法とは別に一部該当する場合は、その基準もクリアしないと適合するとみなされません。
建築基準関係規定に該当する規定は「建築確認申請の審査対象のもの」、「建築確認申請の審査対象外で別の監理機関で審査するもの」と2つに分類され、内容は以下の通りです。
建築確認申請の審査対象による建築基準関係規定
法第6条1項、令第9条規定は、建築確認申請の審査対象によるもので小規模な一般住宅や店舗などの建物該当する場合が多いです。
法律(略称) | 条項 | 内容 |
消防法 | 9条 | 火の使用に関する市町村条例への委任 |
9条の2 | 住宅用防災機器の設置 | |
15条 | 映写室の構造設備 | |
17条 | 消防用設備等の設置維持 | |
屋外広告物法 | 3条 | 広告物の表示等の禁止 |
4条 | 広告物の表示等の制限 | |
5条 | 広告物の表示の方法等の基準 | |
港湾法 | 40条1項 | 臨港地区の分区内における建築物の規制 |
高圧ガス保安法 | 24条 | 家庭用設備の設置 |
ガス事業法 | 40条の4 | 消費機器の基準適合義務 |
駐車場法 | 20条 | 駐車施設の附置 |
水道法 | 16条 | 給水装置の構造及び材質 |
下水道法 | 10条1項及び3項 | 排水設備の設置・構造 |
30条1項 | 都市下水路に接続する特定排水施設の構造 | |
宅地造成等規制法 | 8条1項 | 宅地造成に関する工事の許可 |
12条1項 | 変更の許可 | |
流通業務市街地整備法 | 5条1項 | 流通業務地区内の規制 |
液化石油ガス保安法 | 38条の2 | 供給設備又は消費設備の基準適合義務 |
都市計画法 | 29条1項及び2項 | 開発許可 |
35条の2第1項 | 変更の許可 | |
41条2項 | 建蔽率等の基準 | |
42条 | 開発区域内の建築制限 | |
43条1項 | 市街化調整区域の建築制限 | |
53条1項 | 都市計画施設等の区域内の建築制限 | |
特定空港騒音対策法 | 5条1項から3項 | 航空機騒音障害防止地区等の建築制限等 |
自転車法 | 5条4項 | 商業地域内等における自転車駐輪場の設置に関する条例 |
浄化槽法 | 3条の2第1項 | 浄化槽による屎尿処理等 |
特定都市河川浸水被害対策法 | 8条 | 排水設備の技術上の基準に関する特例 |
建築確認申請の審査外のその他関係規定(抜粋)
そもそも建築確認申請というのは、建物を設計計画に対しての法的審査です。
しかし家を建てる場合、建物の設計計画以外にも「建設工事の施工方法、業者の労働監理」、「建物売買による業務」、「民法」などその他のルールを守る必要があります。
これらの業務全体の流れや管理体制をしっかり行うことで、他業種とのトラブルや財産・健康などが守られることとなるのです。
以下のその他関係規定は、住宅を建築する上で該当する法律を一部を抜粋したものです。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律 | 建築の耐久性を向上し、長期的に使用できるよう検討された住宅で、資源や建て替えなど環境負荷を低減することが目的とされた法律。 |
都市の低炭素化の促進に関する法律 | 住宅の断熱性能や節水対策などで設備の負荷を軽減し、二酸化炭素の排出抑制することが目的とされた法律 |
バリアフリー法 | 特定建築物に該当する建物で高齢者や障害者など誰でも使用できるよう基準を定めた法律 |
宅地建物取引業法 | 土地・建物の売買契約に関する規制 |
宅地造成等規制法 | 土地の形質(切土・盛土など)の変更に関する規制 |
労働安全衛生法 | 建築が完成引渡しするまでの期間中の安全対策による規制 |
建設業法 | 建設業の業務や建築工事請負契約に関する規制 |
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称「建設リサイクル法」) | 建築解体工事の解体方法や安全管理計画による規制 |
土地区画整理法 | 公共施設の整備改善及び宅地の利用増進を図るために行われる土地の区画形質の変更に関する事業 |
景観法 | 景観行政団体による建築物の形態意匠の制限を定める規制 |
文化材保護法 | 埋蔵文化財包蔵地など歴史的文化材が発掘された場合の行政保護に関する取扱いの規制。 |
民法 | 民事によるトラブルに対しての規制 |
上記の建築基準法からその他関係規定については以下の法令集の本一冊にまとめられています。
建物の間取りや配置を設計する上では基本的に必要な知識です。
↓
令和2年版 建築関係法令集 法令編 |
基本建築関係法令集 法令編 令和2年版 |
新築住宅を建築工事を着手する前に建築基準法、その他関係規定に適合しているのか行政審査(建築確認申請)後、確認済書が交付されます。
確認済書が交付された後に工事着手し、中間検査または完了検査をそれぞれ現場で審査を行い、合格した後に依頼主に引渡しという流れとなります。
確認申請について期間や手数料、必要書類、審査項目について詳しく知りたい人は以下の記事をみてください。
↓
また、長期優良住宅の普及の促進に関する法律や都市の低炭素化の促進に関する法律に適合した住宅にした場合、国からの補助金をもらえるお得な制度があります。
詳しい説明は、以下の記事を見てください。↓
新築住宅補助金【2020年版】優遇制度や申請、対象物件とは?
住宅の建築と建築基準法の制限とは?
冒頭で説明しました建築基準法またはその他関係規定について一般住宅で主に建築制限に該当する法律については以下の通りとなります。
これから土地を購入若しくは既に土地を所有している人でも、以下の建築制限は守らなければいけません。
建物の配置や間取り、健康障害や建築不可になる場合がありますので、あらかじめ知識として知っておくことをお勧めします。
一般住宅に規制される建築制限
一般住宅(2階建ての延床面積30坪から35坪程度)の建築規制は以下の通りです。
1.用途地域 | 主に住居系(住宅や小規模店舗などが建築可能)、商業系(大型店舗や高層ビルなどが建築可能)、工業系(製造する工場や危険物を保管する施設が建築可能)の3つに分類され、それぞれ建てらる建物が制限されている。 |
2.建蔽率・容積率 | 土地の面積に対して建物が建てられる床面積を制限した法律。 |
3.高さ制限 | 用途地域、道路幅、敷地の高低差などそれぞれ建物建築可能な高さを制限した法律。 |
4.道路接道義務 | 建物を建てる土地が、建築基準法に定めた道路に2m以上接道しなければ建築できない規制。 |
5.採光・換気 | 土地と建物の配置や居室の窓の種類・寸法・位置、換気について制限した法律 |
6.シックハウス対策 | 内装の仕上げ材料でホルムアルデヒドなど人体に健康障害を与えないように規制した法律。 |
7.階段・廊下 | 階段や廊下の幅や手すり、上り下りについて制限した法律 |
8.調理室など火気使用室の内装制限と換気設備 | キッチンを設置する部屋に使用する壁や天井などの仕上げやレンジフードの設置高さを規制した法律 |
9.居室の天井高さと床高 | 居室の天井平均高さが床から2.1m以上確保や床高の確保について規制した法律。 |
10.一般構造仕様規定 | 建物が倒壊しないように、建物の土台や基礎、柱、梁、壁など構造上の仕様規定についての基準 |
土地を購入する前に必ず確認すべき法律
※上記の規制の中で、「用途地域、道路接道義務」は住宅そのものが建築できない場合があります。
またその他建築基準関係規定の中でも、建築することができない土地も存在します。
土地から購入する人は、以下の記事も見て事前に確認できるようにしましょう。 ↓
建てる地域・地区によって制限される法律
1.防火地域・準防火地域内(火災が発生しやすい区域として指定された地域で、建物を建てる際に耐火性能を求められたエリア)
詳しい説明記事はこちら ↓
2.景観条例(建物に色や材料など自治体の条例によって制限された地域)
3.市街化調整地域(都市計画法)
4.埋蔵文化財指定区域(文化材保護法)
5.土地区画整理事業地区(土地区画整理法)
住宅を建てるためには、建築確認申請は必須です。
以下の本は法令集のみでは理解できないことや、確認申請の手続きについてわかりやすく説明されています。
↓
確認申請マニュアル コンプリート版 2020-21 |
建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアル |
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