家を建てる為の建築工事・その他関連工事を行うには、建設業法に定める工事請負契約を発注者と結ぶ必要があります。
注文住宅やリフォーム工事の軽微な工事でも実質的に報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約はすべて建設工事の請負契約とみなされ、このような行為をする者に対して、建設業法の規定が適用されます。
請負契約を結ぶ目的は、仕事の完成に対して対価を支払う契約で、報酬の請求の根拠や成果実現の危険、損害賠償による契約解除について細かい内容を説明し、当事者同士のトラブルを防ぐ為にあります。
また、業者によって発注者に不利な内容に修正されている場合もありますので、しっかり理解しておきましょう。
工事請負契約書の必要性と作成義務とは?
工事請負契約書とは?
建築工事又は関連工事を含んだ工事を行うことで完成・引渡しをする行為について、発注者と施工会社との間で工事の内容、施工方法、工期、契約解除、賠償などの条件詳細について取り決めた契約書のことです。
条件の詳細を取り決め判断をする為には、契約書とは別に、見積書・設計図面・工程表・工事請負契約約款が添付され、工事の施工方法、着手や完成時期、出来高に応じて請負代金の支払い時期、契約解除についての内容などを決定します。
発注者と受注者(施工業者)との間で、工事が完成するまでの取り決めに関する認識を共有することで、お互いの齟齬をなくしトラブル防止の役割を果たします。
また、どの会社もそれぞれ独自の工事請負契約書を作成している訳ではなく、国が取り決めた様式を基に物件ごとに足りない部分を追加で入れたり、修正している場合もあります。
参考様式 → 工事請負契約書様式(国土交通省 中国地方整備局)
ちなみに設計図面だけでは施工方法や建築材料の品質管理について詳細を確認できないことがあります。
その場合、設計図書(建築確認申請、標準仕様書、特記仕様書、現場説明書)も含めて確認する必要があります。
以下の説明記事を見て、あらかじめ理解しておくと、工事期間中に発生する追加工事費用や業者間とのトラブルを防止することができます。 ↓
工事請負契約書の作成義務について
建築工事を行い建物の完成・引渡しによって発注者から報酬をもらう行為は全て建設業法による工事請負契約書の作成義務があり、契約書の記名や合意確認(押し印済み)まで取り交わす必要があります。
この規定では、建設工事の請負契約の当事者となりますので契約書の作成と記名・押し印済みまで行わないと、発注者(委託者)と請負人(建設業者)の双方が建設業法違反となります。
作成義務に該当する工事とは?
建設業法による作成義務に該当するのは以下の内容です。
建設業法別表第一による工事
・建築工事に関する工事(建設工事一式、大工工事、左官工事、ガラス工事、塗装工事、石工事、屋根工事、鉄筋工事、タイル・れんが・ブロック工事、建具工事、防水工事、鋼構造工事、電気工事、管工事、しゅんせつ工事、電気通信工事、内装仕上工事、板金工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、水道施設工事、さく井工事、消防施設工事、清掃施設工事など)
・土木工事に関する工事(土木一式工事、とび・土木・コンクリート工事、造園工事、外構工事、土工事、舗装工事など)
建設業法施行令第1条の2に定める建設業許可が不要な軽微な建設工事
・建築一式工事以外で500万円未満の小規模な工事
・建築一式工事で、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
・建築一式工事で、1500万円未満の工事
建設業法による工事請負契約書の必須記載事項
建築工事請負契約の書面記載内容は、建設業法第19条に定める項目を記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。
書面記載項目は以下となります。
一:工事内容
二:請負代金の額
三:工事着手の時期及び工事完成の時期
四:請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
五:当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
六:天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
七:価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
八:工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
九:注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十:注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十一:工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十二:工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときはその内容
十三:各当事者の履行の遅滞その他責務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十四:契約に関する紛争の解決方法
工事請負契約書の作成内容の注意点
家を購入するのは一生に一度きりがほとんどといえます。
工事請負契約書の注意点として人生に一度見るぐらいなので、この契約書が本当に適切な書類か見抜くのは難しいと思われます。
経験が無い方でも簡易的なチェックしておく項目を以下にまとめました。
1.工事請負契約約款はあるか
2.契約工程表通りの工事期間が記入されているか。↓
3.工事内容(見積り、設計図面)は明確か。
4.契約工期を過ぎた場合の賠償や設計図面、見積り通りに施工しなかった場合の措置
5.解約・中止に伴う賠償について
上記の項目は施工期間中に問題が生じた場合のトラブルを防止するためには最重要なチェック項目となります。
特に工事請負契約約款には工事中に起きたトラブルの対処や禁止されてる事項、業者の裁量でどこまでのことができるのか細かく規定されています。
この書類がない場合、責任問題がうやむやになり業者の好き放題されても文句が言えない可能性が高いです。
契約前に必ず責任問題をはっきりし、少しでもわからないことがあれば納得するまで確認する必要があります。
また、土地から購入し家を建てる人は、土地探しの際に「建築条件付き土地」という土地を購入する段階で、売主から指定された施工会社と「一定期間内(3か月程度)」に間取りや仕様などを決め、工事請負契約を締結する条件付きの土地があります。
一定期間内(3か月内の場合)、に設計を完了し、請負契約を取交すのは非常に厳しく条件を守れない場合、土地売買契約を白紙撤回する内容ですので、事前に知っておくことをお勧めします。
詳しい説明記事はこちら ↓
建築条件付き土地とは?メリット・デメリットと注意点について
工事請負契約に掛かる印紙税
印紙税は国税庁のHPにより公開されています。
契約金額によって税額は以下の通りです。
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円から100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 |
まとめ
工事請負契約書には国が作成したひな形がありますが、あくまでも必要最低限の項目しかない為、そのまま使用するのはトラブルの原因となります。
工事内容に応じた項目も追加し、発注者にもわかりやすく明確な工事方法や賠償について修正する必要性があります。
注文住宅を購入する場合、施工会社との契約には「仮契約」と「本契約」があります。
仮契約とは、依頼主の希望に合わせた間取り図や概算見積書がある程度固まった段階で申込金を支払い契約すること。
本契約とは、仮契約後に決めた間取り図をさらに細かくした詳細図の追加や設備・仕様の製品やグレードを確定した後に「工事請負契約書」を締結すること。
このように段階ごとに調整すべきことがあり、タイミングを間違えると追加費用やスケジュールに大幅な変更が生じることがありますので注意してください。
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