工事全体の管理体制と仕組みについて
建設業の工事を始める際必ず、元請けと下請けという言葉を聞きます。
実際どのような仕組みで管理体制が行われ、それぞれの役割がどのような作業を分担されて工事が成り立っているのかわからない方は多くいます。
今回は新築住宅の建築工事がどのような仕組みで管理が行われ、元請けと下請けの違いについて詳しく説明していきたいと思います。
建設工事を安全に行う為には管理体制をしっかり組み立てる必要があります。
管理体制とはそれぞれの専門分野を誰が責任をもって担当するのかを役割を決め、建物完成するまでの全体工程を調整するためにあります。
その一般的な仕組み、わかりやすく関連性を以下にまとめました。
管理体制の注意点
上記の内容(現場施工管理関連図)の補足説明として工事監理者(設計者)と現場代理人は大手企業で設計・施工両方対応できるハウスメーカーは会社内も社員で行うパータンがほとんどです。
同じ会社内の社員であることから、監理者が現場代理人に対して本来行う指導助言、図面の整合性、法的確認等がずさんになる傾向があります。
また受注者が時期的に忙しく、手が回らない場合、受注者からどこかの地方の工務店に一括委託し丸投げ状態になり手抜き工事が行われる状況になりやすいこともありますので十分な注意が必要です。
このようなトラブルを未然に防ぐ解決方法として発注者は受注者と契約する前に以下の項目を確認をする必要があります。
・契約前に施工会社から管理体制を明確にし、施工体制台帳などを提出してもらい確認できるようにする。
・工事請負契約書は契約工程表の工期の変更、履行遅滞、違約金、中止権、解除権が記載されているか確認し問題点があれば修正してもらう。
契約前に必ず内容を確認した上で本契約をすることをお勧めします。
また管理体制や工程表を適正に判断する自信のない方は利害関係の無い設計事務所に工事監理を依頼する方法もあります。
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元請けとは?
元請けとは、直接発注者と契約し、工事全体の安全やそれぞれ専門としている職人労働者の割り振りなどを取り決め全体工程を管理することを行います。
建築全体の契約管理や・営業は得意ではありますが、一つの分野に特化した専門性のある業務は対応できないことが欠点です。
工事の規模が大きくなればなるほど、労働者の人数が増える為、人数が50人以上の場合、統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者を選任させ、安全衛生管理体制を確立することになっております。
下請けとは?
下請けとは、発注者から直接依頼を受けることはなく、元請けから間接的に依頼を受ける仕組みで、工事の一部分を請負施工することです。
職人気質が多いことが特徴的であるため、その分野ではすごく優れていますが他の業務ができないことが欠点です。
こちらも人数が50人以上になった場合、下請けの安全衛生責任者を選任して統括安全衛生責任者と作業員との連絡調整を行うことになっています。
元請けと下請けとの違いとは?
元請けと下請けの大きな違いとは、下請けはそれぞれの分野で専門的に極めた施工業者が特徴です。
例えば宮大工や左官、鉄筋、型枠、コンクリートなどで、その業務以外は対応できません。
人数も一人前に育つまでかなりの年数がかかるので中小企業の会社が大半を占めるといえるでしょう。
それに対して元請けの方は、建築全体を広く取り扱い、顧客の収集や営業、契約管理、設計等を主に力をいれて活動し、業務を行う為には多くの資格者が必要なので大手企業の会社が特徴的です。
それぞれ欠点があるため、お互いの会社が協力しあって建築全体の業務ができる仕組みとなっておりますので、どちらも必要なのです。
統括安全責任者と元方安全衛生管理者とは?
統括安全責任者とは?
統括安全責任者とは、各種の雇用関係の異なる労働者が混在して作業する現場において、労働災害を防止するため統括的な安全衛生管理を行う人のことをいいます。
主な業務は以下の通りです。
1.「すべての関連業務を含む協議組織の設置と運営」
2.「元請け・下請けの連絡調整」
3.「作業日に1回以上、作業場所に巡視」
4.「労働災害の原因調査及び再発防止対策の策定」
5.「その他労働災害を防止するために必要な事項の統一(クレーンの合図、有害物の集積場所、立ち入り禁止か所)」
元方安全衛生管理者とは?
元方安全衛生管理者とは、統括安全衛生責任者の補佐し労働災害を防止するために講じる措置のうち、技術的事項について管理するため安全衛生実務経験を有する技術系従業員を選任し、労働基準監督署に届け出る役割をします。
安全衛生責任者とは?
安全衛生責任者とは、下請負業者が労働者の中から選任し、統括安全衛生責任者との連絡調整の業務を行います。
特に資格は必要なく届け出を提出すれば、誰でもなれます。
一括下請負、一括委任の禁止について
よく工事中にトラブルの原因となるのが、一括下請負や一括委任です。
本契約時に受注者(ハウスメーカーや工務店)と工事契約書を取り交わす際に工事請負契約約款について説明があると思いますが、その中で一括請負や委託について記載されています。
一括請負とは、工事の全部を下請け業者に丸投げや委託することをいいます。
請負契約上原則として受注者は第三者に工事を一括して請け負わせることはできないとされていますが、例外としてあらかじめ発注者の承諾があれば一括してよいとされています。
契約書の記載事項を良く確認し、記載されていれば承諾はしないことを強く要望し修正されるまで契約をしないことをお勧めします。
上記の確認を怠った場合、以下の記事に近いトラブルに巻き込まれる可能性が高いでしょう。
↓
欠陥住宅が生まれる4つの原因と未然に防ぐ注意点について
まとめ
今回は工事全体の管理の仕組みと元請け、下請けの説明をしました。
注意してほしいことはどんな人が管理しそれぞれ労働者の選定するのかを理解し、工程表が適正なのかを見極めることが重要です。
理解することで契約後手抜き工事による欠陥や業者とのトラブルを防ぐことができることが最大のメリットですので確認しておきましょう。
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